voice 1. 新谷 武史 先生 (Class of 2016)

歯科医師になって10年、勉強している気になっていた私が衝撃を受けたのが、藤本研修会の歯内療法コースでの石井先生の講義でした。 その素晴らしいコンセプトに圧倒され、その後PESCJの7期生として2015年5月からこのプログラムに参加しました。
 今、受講を振り返ってみると、課題は1年間で30〜35ケース程度を提出、毎月のケースや文献内容についてのまとめのプレゼン。 歯内療法に関する形成、洗浄、などの『お題』を頂きそれに対してのトピックスプレゼン、実技の習得のための根管治療を抜去歯100本程度練習として行い、その中の20本を提出、そして卒業プレゼンなど、非常にストイックに自分と向き合わないとこなせない内容です。 今思い返してもPESCJ本コースの受講中の1年間は、家族との時間や、診療、睡眠の時間など色々なものを犠牲にして、講義の予習復習、抜去歯での根管治療の練習など課題に追われる日々でした。
 まず、PESCJの受講資格が得られるのは、1月の面接の後の合格発表後です。そして本コースが始まるのは5月です。 ただ、受講資格を得た1月の時点で100本以上の膨大な課題論文リストをいただきますから、その1月の時点で受講スタートと考えて良いと思います。 ですからまず、文献を収集するところから始まります。ここが重要なのですが、文献そのものを与えられるのではなく、このプログラムでは『自分自身で勉強する方法を身につける』ことから叩き込まれます。 基本的には講師やインストラクターの先生方から文献内容などについて、最初から細かく教わったりはしませんし、講義も最初の5月に少しある程度です。 気軽に質問しようものなら『自分で調べて解釈するように』と先輩からご忠告をうけます。

その結果、何かを知りたいときには、元になっている論文を読み、1つの知見だけではなく、色々な方向から検証し『自分で正しいと思える答えを出す』という勉強の仕方の重要性を体感します。
 PESCJは少人数制で1年に8名しか受講することができません。そのため講師やインストラクターの先生方の人数のほうが多く、手厚いご指導を受けることができます。 しかし、プログラム内容がハードなため、せっかく受講資格を得たものの途中で脱落してしまう先生もいらっしゃいます。 脱落してしまう先生は、勉強や実技が出来なくて脱落してしまうのではなく、優秀なのだけれど歯内療法領域の学問に対して、情熱を傾けきれない先生が多い気がします。 ですから、安易な気持ちで受講することはお薦めいたしません。 具体的に言うと普通の勉強会であれば、割合は『勉強会:日々の診療や家族との時間』=『1:9』位でも十分やっていけますが、PESCJはその割合が『PESCJ:日々の診療や家族との時間』=『9:1』のように逆転しないと、十分に内容を消化していく事が出来ないと個人的には感じております。 終盤は本当にきつい時期などもあり、赤字覚悟で週に3日くらいしか仕事をせず、文献を読んだり、スライドばかり作っていました。
 ただ、このコースに参加したおかげで、素晴らしい情熱をもった講師の先生方や先輩や同期、後輩の先生とともに研鑽する事ができるようになりましたし、なにより自ら学ぶ姿勢を身につけることが出来ました。 これは歯科医師として他の何にも変えられない宝物だと感じていますし、感謝しております。そして今思い返しても受講中は特に、辛いながらも、充実し、楽しい1年だったと思います。
 今でも継続してグループスタディーに参加しておりますので、この文章を最後まで読んでいただいた、情熱を持った先生にお会いできることを楽しみにしております。

voice 2. 濱田 泰子 先生 (Class of 2016)

私は現在歯内療法を専門に患者様を拝見していますが、元々は口腔外科を専攻していたのですが、畑違いのペンエンドの世界へ飛び込みました。 私は大学院卒業後、歯科医師としての自分の将来像にあまり前向きに考えることができない時期があり、できることなら外科医としてのキャリアを積んでいきたいと考えておりました。 開業時も口腔外科に後ろ髪をひかれる気持ちでしたが、口腔外科と育児の両立の難しさに直面し、自院であれば育児と仕事の両立もある程度可能ではないかと考えた結果でした。 また、当時一般歯科で勤務していた頃、自由診療のクラウンをセットする機会を多くいただきましたが、自分の歯内療法に自信がないあまり、日々このまま患者様の診療を行っていてもいいのかという葛藤がありました。
  そんな私の歯科医師人生を180度変えていただきましたのが、石井宏先生をはじめとする講師の先生方との出会いでした。 同じく石井先生が主宰される藤本研修会のエンドコース藤本研修会で先生方に教えを乞い、歯内療法の面白さ、奥深さにどっぷりはまりそのまま翌年にペンエンドの通年コースを受講いたしました。 ペンエンドにご興味のある先生には藤本研修会との違いについてご質問いただくこともあります。藤本研修会では講義・実習を通して歯内療法の原理・原則を徹底的に教えていただきますが、 ペンエンドでは歯科医学に身を置く人間として必要な論理的な思考、論文の読み方、また今後自分自身が情報を発信していく立場になった際に必要なプレゼンテーション術、また何より歯内療法の枠を越え医師としての高い倫理観など、技術以外の側面もたくさんご教示いただいたように思います。 また、何よりも他の数ある研修会との違いは8人が協力しあい、切磋琢磨しながら自ら学んでいくと言う点であります。
 受講中は診査診断の曖昧さや、論理的思考ができずなんとなく治療を行ってしまったことに対し、時に厳しく先生方にご指導をいただきますが、ある時、「先生に根管治療をされる患者様がかわいそうで仕方ない」と言うご指摘をいただいたことを今でも鮮明に覚えています。 当時の私はいかに診査診断が不安定で、いい加減であったかと恥ずかしく思います。

 また、私の場合は、面接後に妊娠が発覚してしまい、受講と出産が重なってしまいました。 大阪での実習の次の日に入院出産、出産後もおんぶ紐で抱っこしながらマイクロをのぞき抜去歯牙で練習を行いケースを作っていきました。 日中は診療を行い夜は文献を読み漁り、必死さのあまり当時の記憶があまり覚えていないことも今となっては非常にいい思い出です。 セミナー受講中は同期で集まり勉強をする機会もありますが乳飲み子をかかえ外出ができない私の勝手で、自宅に集合していただいたことも度々ありました。 メンバーの心遣いには今も感謝の念が絶えません。
  当時生まれた娘も4歳となり、私もセミナー受講から4年が経過したことになります。 その後、翌年認定医の試験をなんとかクリアし現在は歯内療法専門として歯内療法のみの診療しております。またECJという組織に所属し、出張のお仕事もいただき充実した日々を過ごしております。 特に女性はライフスパンの中で結婚、育児、出産など、男性医師とはまた違った難しい局面に出会うことがあります。 Continuos educationが必要であることは言うまでもありませんが、キャリアの中でブランクができてしまうこともあるかもしれません。 当然専門性を身につけることは非常に難しいことですので、私も道半ばどころかまだスタートラインの辺りをうろちょろしている状態ですが、専門性を身につけることは育児と仕事の両立を図る上で一つの光明をを見出されたように思います。
  近年、歯内療法の重要性は日増しに患者様にも浸透しており、今後は患者様からのニーズもますます増え、GPと専門医との連携が求められる時代になると思います。 歯内療法専門という意味でこれ以上に充実したコースはないですし、歯科のセミナーとしてこれ以上に高いレベルを要求されるセミナーも他にはないと思います。そして何よりも得られるものが大変大きいと思います。 皆様と一緒にペンエンドで学べる日を楽しみにしております。

voice 3. 伊藤 創平 先生 (Class of 2013)

プログラムでは元々与えられた論文と自分の課題分野の論文をあわせると1年で200本前後の論文を読むことになります。この経験により「学ぶ」という意味を体感しました。 今まで私はその分野に詳しい先生の話や本を読むことが「勉強をする」ということだと思っていましたが、伝聞ではなく原著から学ぶという深く厚みの有る学習が自分の自信に繋がりました。 この知識の裏付けは私の日々の臨床において非常に重要で「おかしいなぁ、治るはずなんですけどね…」と治療期間が長期に及ぶこともなく患者さんに自信を持って説明できるようになりました。

これは患者さんの時間や費用を無駄にしないだけでなく、歯科医療への信頼を損なわないことにも繋がると思います。 また今では興味の有る内容を「自分で検索して文献から学ぶ」という方法を学習できたのも財産です。 また抜去歯を使った宿題や各月毎のケースプレゼンテーションというアウトプットの場があり、自分の現状を赤裸々に第3者の目で評価して頂けるのも学習効率を上げました。 現在では周囲の歯科医院から紹介を頂けるようになり、毎日充実した臨床を行なっております。

ペンシルバニア大学での実習のひとこま。

一年間苦楽をともにした?同期との写真(ペンシルバニア大学にて)

voice 4. 李 光純 先生 (Class of 2012)

PESCJの存在を知ったのは、自分のクリニックを開業して2ヶ月目くらいでした。マイクロスコープを購入した会社の方に主宰の石井宏先生をご紹介していただいたのがきっかけです。 私が自分でクリニックを開業したいと思った最大の理由は自費の根管治療を実践したかったからです。 勤務医として勤めていた時代には保険での根管治療しか知らず、根管治療とは最も苦手な治療で、何を基準としておこなうかわからない、ただなんとなくやるもの、患者が痛いといえば、何ヶ月もやり続けるものというイメージでした。 根管治療にまったく自信がもてず、当時おこなわれていた根管治療のセミナーやハンズオンのコースを受講しました。 それだけでも今まで自分が保険でおこなっていた根管治療との差、欧米との格差におどろきショックを受けて、そこで習った事を実践するためには開業するしか方法が無いと思い、周囲の反対にもひるまず思い切って開業をしました。
 PESCJ受講前の私は自費での根管治療というものはラバーダム防湿をおこない、マイクロスコープを使用し、治療時間を1時間以上取り、超音波チップやNi-Tiロータリーファイルを使い、CW法で根管充填をすることであると思っておりました。 それがちゃんとした根管治療であると信じて疑っていませんでした。ところがPESCJに出会い、その考えはがらりと変わりました。 今まで考えていたようなことは、ただのテクニックの話にすぎないということが、受講した今では心の底からよくわかります。 当時(PESCJ受講前)の私の考えってなんて浅かったのだろう、といま思い返すと恥ずかしくなります。
 PESCJで1年間、必死で没頭して勉強し学ぶもの、それははテクニックよりもコンセプトです(これは受講したての頃にはあまりピンときませんでした。コンセプトというものが当時の私は全くわかっていなかった、という証拠です)。
 もちろん実習や課題でテクニックも上達し、これまでよりもスムーズに効率的に治療をおこなえるようになりますが、一番価値のあるものはコンセプトがみにつくということです。 自分や同期生が勉強し、論文を読み込みレビューする過程でコンセプトは身についてきます。目に見えるものではありませんが、大きな糧となります。 自信もつき、どんな症例、どんな患者にも明確に対応出来るようになります。 そこには曖昧さがなくなり、できないものはできない、成功率が低いものは低い、リスクやベネフィットもしっかり考え、すべてが科学的根拠にもとづいて説明がなされ、患者に治療オプションを提示するようになります。

根管治療のコンセプトを学び身につける事で、自分がおこなう治療に明確な根拠ができるようになるのです。
 来院時の診査診断がいかに重要か、今ではルーティンとしておこなわれる検査ですが、PESCJ受講以前はこういったことが行われていなかったので、今とカルテの書き方が違うのです(笑)。 今、再初診でいらした方のカルテを見返すと未熟で無知だったんだな〜と思い、成長できたことが嬉しく思います。
 当然自信がつき、このような姿勢は患者様に安心感、信頼感を与えるようです。PESCJ受講以降、根管治療希望の患者様は増え続けています。
 このようなことを学べるコースに今まで出会った事がありません。私が今まで受講した歯科のコースとは、それまではわかりませんでしたが、テクニックを教えていたんだなということが、PESCJ受講以降にははっきりわかります。 もちろんテクニックも重要ですが、それ以前に歯科医師として患者が抱える問題(病気や治療)に対してどのようなアプローチで思考し取り組まないといけないか、ということをPESCJでは徹底的な教育をしているのです。 もちろん、この1年のコースの内容は濃く課題も多く、楽なものではありません。生半可な気持ちでの受講はお勧め出来ません。 根管治療が大好きである事はもちろん、勉強が好きで情熱がないとついていくのは難しいでしょう。 ただ、これらがそろっている先生ならば、この1年コースはとても刺激的で知的好奇心を刺激され、これまでの勉強の仕方や物の見方を変えてくれる素晴らしい刺激となります。 同じ志をもつ仲間の先生と『同じ釡の飯を食べる?』ことでできる団結、連帯感もすばらしい宝物になります。刺激を与え合い、高め合う仲間ができます。
 PESCJで勉強された先生方は受講後もさらに勉強を続けたくなるようです。私たち3期の先生方も受講中以上に夢中になって勉強しています。 毎年PESCJ卒業後も仲間の先生方とアメリカ歯内療法学会に参加しています。楽しみなイベントのうちの一つです。
 PESCJを受講した事でお金では買えないすばらしいものを手に入れる事ができました。良い時期に良い出会いができて私はとてもラッキーだったと思います。

3期生の終了時の集合写真。みんな卒業プレゼンを終えてホッとしています。

全員が参加したボストンでのAAEにて3期生全員でランチ中

ペン大での研修中のランチブレイクで

voice 5. 清水 花織 先生 (Class of 2013)

根管治療は、患者さんが苦しんでいた痛みから解放されたり、抜歯宣告を受けた歯を保存できたり、歯科医師としてのやりがいを実感できる場面が多い反面、その治療の複雑さから、自分を含め苦手意識を持つドクターは多く、どうすれば得意になれるのか解決策を見い出せずにいました。
 丁寧に時間をかけて治療を繰り返しても治らない症例に遭遇する度、大学や教科書で学んだ知識に限界を感じ、初めて参加したのが石井先生のセミナーでした。 全てが科学的根拠に基づいた非常に論理的な内容で、アメリカのエンド専門医のレベルの高さ、臨床成功率の高さに素直に感動したのを覚えています。
 このプログラムの講師陣は、単に他の治療よりも「根管治療が得意」な先生ではなく、専門教育を受け、日々臨床でも「根管治療だけを専門」に治療されているスペシャリストばかりで、その講師陣が専門医に求められる知識を惜しげも無く熱心に教えて下さいます。

歯科独特の「上手な先生から目で見て盗め」という職人的なものではなく、専門医を養成するために考えられたアメリカの大学院教育に準ずるプログラムで、プロの的確な指導の下、効率よく根管治療の臨床力を向上させることができます。
 日本にはアメリカのような専門医制度が存在せず、一般開業医は全ての分野に精通することが求められます。しかし、各分野でより精度の高い治療が求められる昨今、全ての分野を一人で極めることは不可能だと思います。 今後日本でも各専門分野のドクターが互いに連携を取って治療を行うスタイルが定着していけば、まだ日本には数える程しか存在しない、根管治療を専門に行うドクターのニーズは増々高まってくると思います。
 私はこのプログラムに参加し、科学的に裏付けのある根管治療を実践する事で、ペリオや補綴を専門とするドクターと連携を取りながら、自信を持って根管治療に臨むことが出来るようになりました。

voice 6. 横田 要 先生 (Class of 2010)

私は第1期生として2009年5月からこのプログラムに参加しました。もともと歯内療法に興味があり色々な勉強会に参加しましたが、自分の納得いくような講習会になかなか出会えませんでした。 そんな中、ペンシルバニア大学の歯内療法科大学院への留学経験をお持ちの石井宏先生がスタディクラブを立ち上げるとお聞きし、参加させていただきました。 開始前はちょっと大変そうだなくらいの思いでしたが、実際に与えられた課題にとりかかると、自分の認識の甘さを痛感しました。 コースでは、抜去歯牙での練習、与えられた文献を読んで発表する文献抄読、実際の臨床例を発表するCase Presentation、エンドのトピックについてプレゼンを行うTopic presentationなどがありますが、なかでもプレゼンが大変でした。 プレゼンを構成するにあたり、かなりの量の文献を読む必要があるのですが、英語の文献を読んだことのなかった私には本当に辛かったです。 しかし継続していくと英語文献を読むのに慣れていき、それが「何か分からない事があれば海外の文献を調べる」という勉強法に繋がり、理論立てて診療が行えるようになりました。 一年間はこれらを休む事無く続けていき、最後はペンシルバニア大学の主任教授のKim先生に症例を見てもらいます。 私はKim先生との面接の一番目だったのですが、緊張しすぎて上手に質問に答えられなかったのを今でも覚えています。 卒業生は次年度からの講義にも参加可能です。また卒業後の継続的な学習や技術向上のためのAcademy of Endodontics(AE)といった部門もありますので、プログラム終了後も研鑽を積む事ができます。

歯科の講習会では、決まった期間が終われば「はい、これでおしまい。」といった感じの勉強会も多いと思いますが、“卒業後も継続して勉強する“というのもペンエンドの大きな特徴だと思います。 私は石井先生から米国歯科大学院の専門医プログラムについて色々聞かせていただき、自分もなんとかその教育を受けたいと思い、ペンエンド終了後からエンドの勉強と平行し留学の準備も進めていきました。 英語が全く出来ない私にとって留学に必要なTOEFLの試験をクリアするのは非常に大変でしたが、このプログラムで出会った同じ目標を持つ先生方と刺激しあい情報交換させていただきながら勉強した結果、2014年7月からペンシルバニア大学歯内療法学科大学院に入学する事ができました。 自分が留学できたのもペンエンドに参加させていただき、石井先生はじめ、講師の先生方、また志の高い先生に囲まれて勉強させていただいたからだと実感しております。 このHPをご覧になっておられる方の中には、歯内療法の臨床力を向上させたい、又は専門医レベルの根管治療を患者様へ提供したいとお考えの先生もいらっしゃると思います。 受講中は辛く厳しいこともあるかと思いますが、コース終了後には間違いなく知識、技術の向上と共に、受講してよかったと感じられると思います。 ペンエンドでお会いできるのを楽しみにしております。

voice 7. 上野 光信 先生 (Class of 2014)

今思い返すと受講のきっかけをつくったのは、その当時、導入したてのマイクロスコープで覗いた歯髄腔の画像である。 「GPがこんなにもとれていない」「壊死歯髄は洗ったと思ってもこんなに残っているものなんだ」など、それまで3.5倍のルーペを使って悦に入っていた私にとっては衝撃的で、思い切り頭を殴られたような感じがしたのを覚えている。 どうにかしてこれらを綺麗にしてうまく充填する方法はないものかと情報を集め始め、PESCJのHPに辿り着いた。 つまり日本の根尖性歯周炎の有病率を下げたいという大志を抱いて門を叩いたわけでは微塵もないということである。
 運良く受講が決まり、受講前準備のためPESCJのコンセプトが学べる二日間コースを受けてみると、うまく充填する以前に診査診断、意思決定、無菌的処置、治療時間の確保など、もっと重要な事があることを知り、実に痛いところを突かれたと席で唸った。 テクニックばかりに目が行き、見て見ぬふりをしていた部分をはっきり指摘されたような気がしたからである。
 遅くとも受講までに環境を整えなくてはならない。また新しい道具の扱い、滅菌方法など自分以外にスタッフも知らなくてはならないことをどのようにうまく理解してもらうか(現在進行形の課題でもある)。 院内ミーティングのときに時間をもらいおおまかに決定した方針を話し、細かいことや変更点はその都度説明をしていった。
 受講が始まると流れは大きく座学と実習に分かれた。座学はエンドに関する論文を読み内容をプレゼンテーションすること、そして実習は抜去歯実習と日常臨床におけるケース作成である。
 座学には、論文の内容を正しく理解すること→みやすいスライドを作ること→時間内にわかりやすくプレゼンすること、とハードルがいくつかあった。 読むだけならまだしも「みやすく」スライドを作ることと「時間内にわかりやすく」プレゼンすることには全く慣れていなかったので、夜な夜な一人で何もない空間に向かって笑顔で語りかけるという気味の悪い練習をすることもあった。
 実習に関して、Ni-TiロータリーファイルにもCWCT(根管充填法)にもほとんど慣れていないゼロに等しい状態であったので、休みの日や診療後に抜去歯で十分練習してから実際に患者に応用した。

医院のアポイント時間を使いながらの実習であるのであまり悠長にやっていると経営に響き、そしてまたタイムマネジメントとしての実習にもならない。 最初の頃は自院にいながらにして嫌な緊張を感じながら、実習を進めていた。 単根管の何の難しさも無いケースも慣れない頃は、おたおたしながら90分のアポイントを三回使ってしまい、インストラクターの方々に指摘されたこともあった。
 作ったケースは皆の前で発表し、さらに石井先生とマンツーマンのディスカッションもすることになっている。 ここで診査診断、意思決定のプロセスの評価や、道具の使い方の細かい感覚など、こうすればいいのかという気づきをいくつも頂いた。 問題点を厳しく指摘され、自院に帰り慌てて対策を練り、次回はそこを解決済としていく(していかないと色々な意味で大変なことになる)、この繰り返しであった。 このサイクルのおかげで臨床力を上げることができたのだと思う。
 PESCJ内の連絡は主にFacebookで、PESCJ公式、一期上の先輩たちとのグループ、同期内のグループを使い分け、PESCJ全体の情報共有、先輩たちへの日常臨床の質問や、こんな便利なものがあるよ、同期内でこんな悩みがあるけどみんなどうしてるのよなどなど活発にやりとりをしている。 ささいなことでも質問できる雰囲気、そして反応が非常に早いことはとても有難い。
 受講中にインストラクターの方々から指摘されることは厳しいが、飲み会の席では全くそんなことはなく親しくざっくばらんにいろいろな話をして頂いた。 実際、受講中に得ることと同じくらいの指導をしていただいたと感じている。良い意味で「部活」という表現が適切だと幾度となく思った。
 一年間の受講を終えた時点で、コンベンショナルのケースの診査診断、処置は「なんとなく手をつけ処置を進める」のではなく「ステップステップで確認すべき事柄をクリアしながら進める」というふうに著しく変わったように思う。 多少の自信もついてが、外科も含めまだまだまだである。今後はPESCJ認定医取得を目指しさらなるスキルアップを図りたい。 受講中はもちろんのこと、卒後も持続的に研鑽を積み、延いては各々の地域のエンドで困っている方々への啓蒙活動にも興味のある先生には是非とも受講をお勧めする。

voice 8. 根井 俊輔 先生 (Class of 2014)

皆さん、はじめまして。5期生の根井俊輔(宮崎市開業)と申します。このHPをご覧になっていると言うことは、根管治療に何らかの意識が強く働いている事と推察いたします。 いろいろな考え、思いを持ってこのプログラムに参加をされますが、私の場合は、最初の動機が少し特殊なケースかもしれませんので、ご紹介します。 私は元来根管治療が苦手なため、いろいろな根管治療講習会に出席し、研鑽を積んできました。 それなりの自信もつき、縁があってメーカーからの依頼で、根管治療講習会なるものを行って参りました。 ただ、私が行ってきたものは、著名な先生方から得た知識、情報や本や雑誌からの知識を自分なりにまとめたことを、受講生の先生方に教えたものです。 その講習会を続ければ続けるほど、本当にこれは正しい事をおしえているのだろうかと言う疑問が日に日におおきくなり、それがだんだんと苦痛になってきていました。 その時に「Penn Endodontic Grobal Symposium in Japan」が開催され、そこでのEvidenceに基づいた揺るぎない理論と実践を目の当たりにして、「これは本物だ」と直感し、このプログラムを受講したいと言う思いが強烈に巻き起こりました。 面接後、だめだろうと思っていた矢先、合格のメールが届いたうれしさを昨日の事のように覚えています。
 さて、このプログラムの特徴は、「全ての事にactiveに、aggressiveに」と言う事につきます。 1年間と言う短い期間で、歯内療法専門医としてのスタートラインに立とうとしているのですから、それなりの苦労があるのは当然ですが、ただ単にプログラムをこなす以上の事が求められます。 このプログラムの一つの特徴として、8名で一緒に研鑽を積むと言うのがあります。効率よく勉強するためにプログラムが組まれていますが、各々の責任は重大です。

例えば自分が担当するトピックスプレゼンテーションは、そのトピックについて8名の中で、一番良く理解していなければならず、それをプレゼンテーションという形で残りのメンバーにレクチャーします。 このプレゼンテーションの出来が悪ければ、残りのメンバーの学習に大迷惑をかけてしまいます。 自分さえよければはだめで、8名全員が効率よく、しかも全員が1年後に歯内療法専門医としてのスタートラインに立てるようレベルアップする必要があります。 5期生は年齢、性格、参加環境も様々で、最初は遠慮がちでしたが、メンターの先生方の叱咤激励により、次第に結束力が生まれ、全員で卒業試験に合格することができました。 現在も5期生だけの勉強会を行ったり、月1回Facebookに症例を提示して各々採点し、来る認定医試験に向け研鑽を積んでいます。 合言葉は「認定医全員合格」です。このプログラムを一緒に修了した同期生は、年齢は違えど「戦友」 「同志」といった感覚で、一生つきあって行ける関係となりました。これもPESCJの特徴だと思います。
 朝、5時になるとパソコンの電源を入れ、2時間文献を読むのが日課です。歯科医学を担うものとしては、研鑽を積む事は当たり前の事だと、このプログラムは教えてくれます。 石井先生にはこの年になって「学習することの楽しさ」 「Logicを持って歯科医療に取り組む大切さ」を教えていただき、本当に感謝しています。 残された歯科医人生は、自分の歯内療法のレベルアップと世界基準の歯内療法の普及に、微力ながら取り組んで行く所存です。
 PESCJの受講を考えている先生方、ぜひ一緒に研鑽を積みましょう!!